腐ったミカンなど存在しない

  • 2019.04.11 Thursday
  • 16:50

どの現場にも問題児とされているスタッフはいると思います。

特に飲食業界は常に人手不足なので、多少問題のあるスタッフにも働いてもらわないと首が回らない現実があります。

そういう問題児とどう付き合っていくのか、というのは現場のリーダーにとって大きな課題であると言えます。

 

現場でよくみる対応としては次の三つがあります。

・問題行動のあるスタッフを退職させる事でモラルを徹底する

・カウンセリングやトレーニングなどのアクションを起こして更生させる

・他の従業員への影響が少ない働き方をしてもらう、勤務時間を調節する

 

これらの手段は全てが正しい手段なのでしょうか。それともどの手段が正しくて、どの手段が間違っているのでしょうか。

これはどの現場でもよく議論されることだと思います。もしかしたら永遠のテーマなのかもしれません。

 

飲食歴20年の私もついこの前まで自問自答を繰り返していました。

正直に言えばどちらかというと「モラルの低い従業員は追放するべきである」という考え方を持っていました。

でも今は違います。この数年で私はこの問題に一つの答えを見つけました。

それは「自分の現場に腐ったミカンはいない」という信念です。

日本人はどちらかというと「腐ったミカン」を決めつけ、スケープゴートにしてしまう傾向にあります。

あいつがいなければ、あいつのせいで、あいつだけができない…何もかも人のせいにする生産性の低い人たちの口癖です。

現場生活が長い私からすれば、もうとっくの昔に聞き飽きたセリフです。

 

今回の記事では私が「腐ったミカンはいない」と思うに至ったエピソードを話そうと思います。

 

目次

・あなたのとこにもいる?チンドン屋

・モグラ叩きと原因解決は違う

・腐ったミカンは自分の中に存在する

・まとめ

 

 

あなたのとこにもいる?チンドン屋

私がレストランで調理の仕事をしていた時の話です。

毎年春になると新卒の新入社員がホールとキッチンに1人ずつ配属されます。

飲食店の新人さんに共通して起こる現象かもしれませんがお店の調理器具や食器を丁寧に扱えない時期があります。

それが長く続く人もいればすぐに治る人もいます。教育の仕方や指摘方法、本人の気付き等によってそれは違います。

でもそれは治る人の話です。これが治らない人もいるのです。

仕事は早いんだけど雑、忙しくなってくると食器を投げる、ストレスがたまるとモノに当たり散らす…あなたの現場にもいますよね、そういう人。

私が新人教育を担当するようになってから数年たった時にそういう新人が私の前に現れました。

もちろん当時の私の手に負える相手ではなかったし、とにかくガシャンガシャンとうるさかったのでその新人の事を疎ましさを込めて「チンドン屋」と呼んで毎日のように指摘し怒鳴り、時には小突くくらいの事はしていました。

とにかく大きな音をたてて物を大切に扱えない人、あなたの現場にもいると思います。

 

モグラ叩きと原因解決は違う

私はその新人が大きな音を出すたびに指摘し、物を壊すたびに大きな声で叱っていました。

反抗してきたら「お疲れ様」と一言突き付け帰らせたりも日常茶飯事でした。

これだけやってもその新人は一向に治りませんでした。それどころか症状は悪化していきました。

打つ手の無くなった私はそんな新人を採用した会社に対して文句を言うようになり、新人に対しても上司に対しても会社に対してもきつい言葉ばかり投げかけるようになっていました。

 

そんなある日、私の先輩がその新人にあいさつ程度ではありますが声を積極的にかけるようになっているのに気付きました。

その新人は行動に問題があるとされていたので、アルバイトの学生からも上司からも挨拶さえまともにしてもらえない状況になっていました。彼は腐ったミカンでした。少なくとも私はそう思っていました。

そのような状況の中、先輩が気軽にこまめに話しかけているというのは異様な光景に見えました。

当時の私にはこの行動が何なのか到底理解できないものでした。

 

その先輩は新人の問題行動に関しては一切触れませんでした。会話の内容は着ている服とか携帯の機種とかアニメとか漫画などの仕事とは関係のない話でした。

先輩はいつも質問をしては新人の答えに対して「そうなんだ」「そうかぁ」とうなずくだけで深堀はせずただ傾聴していました。

一か月くらい経ったある日、彼の問題行動はぴたりと無くなりました。入社してきてから最初の夏を迎えようとしているくらいの時期でした。

 

夏休みの繁忙期にその新人は私の指導をきちんと聞き一年生としては一通りの仕事はできるようになっていました。

例年の新人と比べて異例の成長の速さでした。このころには私とも、その他の社員やアルバイトの人たちとも親しくなっていました。

私は先輩の行動が何かきっかけになった事には気付いていましたが理解はできませんでした。

一つ気付いた事は、起きた現象に対してモグラ叩きのように叩いても原因を根本的に解決はできないという事でした。

 

腐ったミカンは自分の中に存在する

その新人は私がその会社を退職した後もその会社で活躍し、店舗の料理長にまでタイトルアップし現場で日々商品の管理や人材の育成に奮闘しています。私がかつて「腐ったミカン」と烙印を押した人物は人の上に立つ資質のある優秀な人材だったのです。

 

今の私には先輩のアクションの意味を理解するチカラがあります。

現場において問題行動を繰り返す人の心理は「みんなにかまってほしい」であることが多いと思います。

でも実際にはそういう問題行動を起こすことによって自分から人が離れていってしまいます。

なので問題行動はよりひどく悪化していくのです。

 

それに気づいた先輩が「かまう」行動をとったわけです。

一切指摘することなく、ただコミュニケーションをとる。そして相手の事を知るために色々尋ねる。相手が話し始めたら傾聴する。

これは承認行動ですよね。相手の存在を承認する事で問題行動を改善してしまったのです。

 

本来これは私の仕事でした。

私は自分に与えられた責務である新人の教育を「腐ったミカン」という一方的な思い込みで放棄し、さらには会社や上司の意思決定に対してクレームをつけるという愚行をしていただけなのです。今思うと恥ずかしい限りです。

腐ったミカンなんて存在しなくて、ただ自分が勝手に決めつけているだけなのです。

 

まとめ

スタッフの問題行動を改善するためにはルールやモラルを強要しても根本は解決しません。

今回のエピソードでは新人スタッフの承認欲求と周囲の新人に対する関与不足が原因でした。

新人は不慣れな環境で仕事をしています。

仕事自体も不慣れだし知識も不足しています。それに加え人間関係も構築されていません。

ベテランの私たちから見たら彼らは「腐ったミカン」に見えてしまうこともあるかもしれません。

でもこの世には「腐ったミカン」は存在しません。私は実体験として同じような経験を現場で幾度となくしてきました。

 

腐ったミカンは自分の中にだけ存在する思い込みなのです。

 

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